橋本武さんの授業は世の受験勉強とは全く異なるものでした。


さて、「禅問答は答えがないのに、なぜ師は、弟子の修行者が
正解したことがわかるのですか?」

 という質問がありました。質問というよりも話の中で出てきた
疑問でした。
 
 禅では公案という問題を修行者に出し、座禅や修行をしながら
その答えを自分で考え体得させるという方法をとっています。

 その答えは、人それぞれに違うもので、万人に共通する確かな
答えはないとされています。

 禅では、公案の答えを聞いて頭で理解することはあまり意味が
ありません。

 禅は元々、不立文字、以心伝心と言われていますので、その答が
本や文章に残っていたら矛盾が発生します。

 また頭(知識)で考えて解るものではなく、日々座禅や修行等での
心身の鍛錬・研鑽を積む事で自然と見出されてくるものですから、
明確な言葉や文章にして表現できないのです。

 しかしながら、禅関係の解説書は、数多く出版されています。
これは、少しでも禅に関する考えを深めたいという需要があるから
だと思います。

 問題がある以上、その答えは確かにあります。しかし、公案を
通しての禅の修行の目的は、答えそのものではなく、弟子=修行
者の「答え方」が大切になるのです。

 師は、修行者の心の深まりのレベルを見ているのです。

 そもそも、公案とは、禅問答を問題にして、師が弟子に突きつける
もので、これに正しく答えることができれば、修行が進んでいること
にもなり、すぐれている弟子は師の名を継ぐこともできるようになり
ます。

 この様な体系なので、弟子は公案に対して論理的に答えては
いけないのです。

 世間一般の常識的なことを答えたら、すぐに、門前払いに
なってしまいます。

 解説書に書いてあるような模範解答で答えても師は、その弟子
の心から出てきた答えでなければ、合格にはしないのです。

 とにかく、色々考え尽くして、袋小路に入ったような状態になるの
ですが、その考えも尽き果ててしまい、全く別の方向の内的動機
から、思いもよらず、スパっと答えが出てくるのが公案だとも言えます。

 公案は、5年~6年もかかって、一つのことを考えるのです。
そのために、心身ともに浄化して、純粋な心の源に至るように、
固定観念や自分を捨てるのです。

 この心を深める過程は、U理論に似ています。U理論がこの禅
の修行を参考につくられたもので、ハワイのホ・オポノポノも心
を深めるという点では共通しています。

 一般人の私たちは、禅の師匠に1つの公案を提示され、それに
数年間も命がけで取り組むというような修行はとうてい出来ません。

 もっとも、現代の情報化社会の中にあっては、禅寺においてさえ、
昔のような大らかな修行は、とうてい望めないのかもしれません。

 ですから、短期間に、しかも、簡単にできて、現代的な類似した
方法が出てくるのは当然のことなのかも知れません。

 いずれにしても、西洋的な思考法だけではなく、禅の公安のよう
に子供のころから物事をじっくり考えることは、大切なことだと
思います。

 小学校もそうですが、中学も、高校も、教科書の単元が多すぎる
とおもいます。

 それぞれの単元の知識の表面だけをなぞっているだけで、
じっくりと深めて考える時間も与えられずに次に進むのですから、
上っ面だけの虻蜂取らず!の教育になっているように思います。

 メルマガでは、以前に、灘中高元国語教師、橋本武さん(97才)。
神戸の中高一貫校、灘中高で50年教鞭をとり、灘を東大合格者数
日本一に導いた伝説の教師を紹介しました。

 橋本武さんの授業は世の受験勉強とは全く異なるものでした。

 教科書代わりに使ったのは、一冊の文庫本。中勘助の小説
「銀の匙」です。橋本さんは、およそ200ページのこの作品を、
中学の3年間かけて、じっくりと読み込む異色の授業を行いました。

 その一部をメルマガから抜粋します。

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 かつては無名だった神戸の灘高校を、東大合格者数日本一に
導いた元国語教師・橋本武さん(97歳)。国語嫌いの生徒からも
学ぶ意欲を引き出すユニークな指導法に迫る。

 橋本さんは神戸の灘中学・灘高校で50年間教壇に立ち、かつては
無名だった同校を、東大合格者数日本一に押し上げた“伝説の
国語教師”。

 国語嫌いだった生徒からも学ぶ意欲を引き出し、やがて東大へと
導いた「人作り」の極意とは?

 しかし、進学校のイメージに反して、その授業は世の受験勉強
とは全く異なるものでした。教科書代わりに使ったのは、一冊の
文庫本

 中 勘助の小説「銀の匙(さじ)」です。橋本さんは、およそ
200ページのこの作品を、中学の3年間かけて読み込む異色の
授業を行いました。

 国語嫌いだった生徒からも、学ぶ意欲を引き出し、やがて東大へと
導いた橋本さん。その指導法とはどんなものだったのでしょうか?

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 以前の私立灘高校は、神戸の県立高校不合格者の受け皿として
の存在でしたから、現在の様なレベルの高い生徒の集団ではあり
ませんでした。

 番組でも、かつては無名だった神戸の灘高校、と書いてあります
から、現代の灘高からは想像もできませんが、県立高校不合格者
の落ちこぼれの生徒が通っていた高校だったのです。

 そのような、無名の高校を、“伝説の国語教師”であった橋本武さん
(97歳)が、東大合格者 日本一に導いたのです。

 97歳の年齢でも、心身ともにしっかりされており、見習うべきところ
がたくさんあり、敬服して見ておりました。

 一般的に、数学も、英語も、大切に思える教科がありますが、
国語はあらゆる教科の基本であり、国語の力があるかないかで、
他の教科の理解力が大きく違ってきます。

 数学も、読む力や理解する力は、国語力ですから、国語力が
なければ、途中で挫折して伸びなくなります。

 英語も、国語の力が大切で、理科と社会も読み込む力がないと、
高いレベルには到達できません。

 ですから、国語はすべての教科の要(かなめ)なのです。

 橋本先生は、将来のことを考えても、生徒には、国語を好きに
させて、国語力をつけることが何よりも大切なことと考えたのです。

 灘校では、中学・高校の6年間を同じ教師がずっと数学も英語も
国語も教えているようで、その経験からも、国語の重要性を痛感
していたのです。

 国語の力をつけることにより、他の教科も20点くらいの底上げ
ができますから、読んで理解する力がいかに大切なものなのか?
一般には知られていないことです。

 私の塾でも、国語の教科書の「百読」を奨励して、読む力を
つけて、他の教科の底上げをはかりました。

 遅れている子は「言葉の数」が足りないだけですから、国語の
土台を作ることが先決になります。オール4くらいの生徒でも、
国語をおろそかにしている子は、伸び悩みます。

 「百読」をすれば、成績は天井知らずに伸びますから、東大だって
夢ではなくなります。

 一つのことを、とことん追求することが、良い結果につながる!
と、言われても、にわかに信じられないことで、無理もありませんが、
これは、事実です。

 さて、橋本先生の授業では文部省検定の教科書を使わずに、
中勘助氏の岩波文庫の『銀の匙』という本を3年間かけて、じっくり
読み込む方法をとりました。

 そして、そこに書かれている事柄を詳細に吟味して、その背景に
ある伝統や文化へと発展させて、生徒達の好奇心を引き出して
ゆきました。

 本の中で百人一首が出てくれば、教室でカルタ大会をして和歌を
暗記させたり、今では見なくなった駄菓子の話が出てくると、
その駄菓子を用意して生徒みんなに食べさせたり・・・・。

 凧(たこ)が出てくれば凧を作って、校庭で凧揚げ大会をするなど、
ユニークな授業が行われたのです。

 とことん深めることが、生徒の心を開くことになります。
再確認させられました。

 これは、生徒の知的好奇心に火がついた状態になります。

 一端、生徒がその教科に興味を持って好きになったら、
どんなに難しい知識でも、どんどん吸収して行きます。 

 たくさんの宿題を与えても生徒は意欲的にこなし加速度的に
力をつけて行きます。

 教科書のレベルだけでは、生徒は満足しなくなるのです。

 今までとは反対に、たくさんの宿題や課題を生徒が要求する
ようになります。

 どんどん深めて行きますから、本来の自己の領域まで、至り、
内なる叡智につながる生徒も出てきます。 

 ここで、先生の力量が試されます。橋本先生は、毎晩、2時とか
3時まで、自作のプリントを創っていたそうです。

 こうなったら本物です。生徒は自信がついて、苦手な教科にも
困難はなくなります。

 数学も英語も理科も社会も、困難がなくなりますから、高いレベル
へ到達できるのです。

 そして、奇跡が頻繁に起きてきます。無名だった神戸の灘高校
に、100人以上の生徒が東大に合格する!という、東大合格者数
日本一の奇跡が実現したのです。

 橋本先生は、同校に五十年在職しております。在職50年間の
間に、多くの生徒の心に火をつけ、生徒の中の天才の領域から、
最高の能力を引き出してきたのです。

 作家、故遠藤周作さんも教え子の一人で、その他にも色々な
分野で活躍している多くの天才を育ててきたのがわかります。

 天才になることの条件は、心を深めて、内なる叡智につながる
ことです。

 どんなことでも、一つのことを徹底して続ける事が心を深める
ことになります。

 心をとことん深めることは、心を開くことにもなります。

 白隠禅師は、軟酥(なんそ)の法や内観の四則で、ホーキンズ
博士は、キネシの問いかけで、そして、空海は100万遍の真言の
実践で、天才の領域につながっています。

 一つのことをとことん深めたから天才になれたのです。

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 長くなりましたが、禅の公案での修行は天才養成のシステム
だったのです。

 白隠禅師は、500年に一度の天才僧と言われていますから、
納得できます。

 天才になることの条件は、心を深めて、内なる叡智につながる
ことです。

 石の上にも三年!ということわざもありますが、考案のように
同じものを3年間考えて心を深めることができたら、神戸の灘高校
のような奇跡が頻繁に起きると思います。

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